建設業許可の更新が迫っています。ただ、今年になって資金繰りが厳しく、税金に滞納があり、また社会保険料や労働保険料も未納の状態です。やはり、更新に際しては、すべて支払ってからでないと手続きできないのでしょうか。
建設業においては、工事の完成を請け負うという事業の性質上、資金繰りが非常に重要です。
何より優先したいのは材料屋さんや、下請け業者への支払いでしょう。
そんな中、令和2年10月の建設業法改正により、建設業許可に社会保険及び労働保険(雇用保険)に適正に加入していることが要件として加えられました。
これによって、以後は建設業許可の更新の際にも、社会保険及び労働保険(雇用保険)の適正加入を裏付ける資料の提出が絶対条件として求められるようになります。(以前は、未加入でも許可に直接の影響はありませんでした。)
社会保険・労働保険の適正な加入は、これまで有耶無耶で済ましてきた建設業許可業者にとっては、負担が増加する結果となります。
資金繰りに困った結果、社会保険・労働保険(雇用保険)の保険料について、しかたなく滞納している状態に陥ってしまったというご相談企業も増えています。
今回のご相談は、税金や社会保険・労働保険の保険料を滞納している場合は、許可が更新できるのか。という点に回答したいと思います。
目次
更新可能です
完納は要件では無い
さっそく結論から申し上げますと、税金や社会保険(健康保険・厚生年金)・労働保険(労災雇用保険)の保険料の完納は、建設業許可の要件ではありません。
よって、未納(滞納)の状態でも、建設業許可の要件さえ満たせていれば更新することができます。
もう少し解説したいと思います。
建設業法施行規則第7条第2号
建設業法施行規則には、建設業許可の要件として、社会保険(健康保険・厚生年金)及び労働保険(雇用保険)に適正に加入していることが規定されています。
イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ロ 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和二十九年厚生省令第三十七号)第十三条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ハ 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第五条第一項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百四十一条第一項の規定による届書を提出した者であること。建設業法施行規則第7条第2号 抜粋
ここには、あくまで適正な届出をしている(適正に適用手続きをおこなっている)ことが条件として記載してあるので、実際に発生する保険料等の支払い状況等は問われていません。
よって、保険料の未納(滞納)がある場合でも、これが建設業許可に直接影響を及ぼすことはありません。
また、同様に、税金の未納についても条件としては規定されていませんので、未納があった場合でも建設業許可に影響は及びません。
裏付け資料の提出
保険料が未納でも良いとはいえ、建設業許可の更新に際しては、社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険)が適正に適用されているかの裏付け資料を提出することになります。
この点について建設業許可事務ガイドラインには以下のとおり記載があります。
「健康保険」及び「厚生年金保険」については、申請時の直前の健康保険及び厚生年金保険の保険料の納入に係る「領収証書又は納入証明書」の写し若しくはこれらに準ずる資料、「雇用保険」の加入状況の確認については、申請時の直前の「労働保険概算・確定保険料申告書」の控え及びこれにより申告した保険料の納入に係る「領収済通知書」の写し若しくはこれらに準ずる16 資料とする。これらの書類を提出できない者にあっては、届書の写し(受付印があるものに限る。)など届書を提出したことを確認できるものの提出で代替することも認めるものとする。
建設業許可事務ガイドライン 抜粋
基本的には、直前の領収書で確認することになっています。
さて、保険料を納めていない場合には、具体的にどのような書類を提出すべきなのでしょうか。
この後ご説明します。
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手続き上の処理
納税証明書の添付
税金の未納(滞納)があった場合でも建設業許可に直接影響は及ばないことは説明しました。
そんな中で、建設業許可事務においては、毎年の決算が終了するごと4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了届・年次報告)が義務づけられています。
このお手続きにおいては、納税証明書の添付が求められます。
決算変更届(事業年度終了届)に添付される納税証明書の種類
知事許可 | 法人事業税納税証明書 |
大臣許可 | 法人税(その1)納税証明書 |
ここで、税金に未納がある状態で納税証明書を取得すれば、当然未納税額について記載されることになります。
少し恥ずかしい気もしますが、大丈夫です。
未納税額が記載されたまま添付してもお手続きは可能です。
また、決算変更届(事業年度終了届)の届出が受け付けられた後についても、当該納税証明書は閲覧対象外書類として、基本的には第三者に見られることはありません。
社会保険(健康保険・厚生年金)の確認資料
保険料の未納(滞納)は、建設業許可に直接影響はありません。
しかし、建設業許可の更新の際には、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していることの裏付け資料を提出することになります。
具体的には、以下の書類が裏付け資料にあたります。
社会保険の加入裏付け資料
● 保険料納入告知額・領収済額通知書
● 納入告知書納付書
● 健康保険及び厚生年金保険の納入証明書 etc
ただ、これらの書類については、保険料が納付された領収書となります。
まったく保険料が納付できない場合には、領収証の体がとれません。
そのような場合には、以下のような書類で代用することも可能です。
● (健康保険・厚生年金)適用事業所関係事項確認書
(健康保険・厚生年金)適用事業所関係事項確認書については、現在の社会保険の加入状況を証明して頂ける資料です。
原則として、管轄の年金事務所で取得が可能です。保険料の未納等の記載はされませんので、保険料の納付が難しい方については、こちらで提出するという方法もあります。
労働保険(雇用保険)の確認資料
保険料の未納(滞納)は、建設業許可に直接影響はありません。
しかし、建設業許可の更新の際には、労働保険(雇用保険)に加入していることの裏付け資料を提出することになります。
具体的には、以下の書類が裏付け資料にあたります。
雇用保険の加入裏付け資料
● 労働保険概算確定保険料申告書 + 領収通知書
● 労働保険料等納入通知所 + 領収通知書
労働保険については、年に一度(6月~7月)労働保険概算確定保険料申告の必要があります。最低限この申告をおこない、その申告控え書類に窓口で収受印をもらうようにします。
申告自体をしていない場合には「認定決定」といって、労働局より一方的に保険料が決定され、それを支払うことととなります。
労働保険は、社会保険に比べて保険料が少ない場合が多いので、資金繰りが厳しくとも、せめてこれだけでも納付をお願いしたいところです。
まとめ
そもそも未納はよくない
建設業許可には直接影響を及ぼさないといえども、やはり税金や保険料の未納はよくありません。
資金繰りなどが難しいのが建設業界です。
しかし、コンプライアンスにうるさい建設業界でもあるため、気をつけたいところです。
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