建設業許可の基本。理解するための7項目完全解説。

建設業許可

建設業は、大きな金銭と、膨大な時間、多くの労働力が動く日本の基幹産業です。故に、法令遵守が徹底されるべき業種といえます。この建設業界において、最も基本的な制度の一つといえるが建設業許可制度です。

本記事においては、建設業許可制度及びこれらに関連する事項を網羅的に解説していきます。よって、建設業許可の全体像を把握したい。基本から十分に理解したいという方におすすめです。

目次

建設業許可とは

建設業許可の意味

建設業許可とは、建設業者が建設業を営む上で必要とする業(ぎょう)の許可です。

建築物は、一度建築すると非常に長い年月使用されます。また、建築物は容易に作ったり、壊したりすることができません。施主は、当然に信用できる技術力の高い建設業者に施工を依頼したいものです。また、建築工事は労働災害が発生しやすい業種でもあります。そこで、建設業法では、ある一定の規模以上の工事については、建設業許可を取得している建設業者でなければ受注できない制度を設けています。

建設業許可を取得すれば大規模な工事を受注することも可能です。また、許可を取得するためには許可の基準を満たす必要があり、よって経営力や技術力の裏付けとなります。建設業を営む者にとって、建設業許可が、最初の目標であると言えます。

POINT

建設業許可とは一定の規模以上の工事を受注するのに必要な業の許可である。

ちなみに、建設業許可とよく混同されがちなのが、建築確認(建築許可?)といった言葉です。建築確認とは、それぞれの建築物を建てる際に都市計画や強度設計等について問題ないか申請するものですので、建設業許可とは異なります。

軽微な工事

一定の規模以上の工事を建設業者として受注するには、建設業許可が必要と説明しました。では、この一定の規模以上の工事とは、どのような工事でしょうか。
これについて、建設業法では「軽微な工事」であれば建設業許可が不要で受注可能としています。つまり、この「軽微な工事」を理解すれば、建設業許可が必要な一定の規模以上の工事が理解できます。

軽微な工事の基準としては、まず建設工事を「建築一式工事(簡単に言えば建物を一棟建築する一式工事)」と「それ以外の工事業種」で区別して考えます。

建築一式工事については、1件の請負金額が1500万円未満の工事、又は木造住宅(延床面積の1/2以上が居住用の建物)で延べ床面積が150㎡未満(これについては請負金額は関係ない)である工事を軽微な工事とします。

建築一式工事以外の工事については、1件の請負金額が500万円未満の工事を軽微な工事とします。

ちなみに、建設業法に規定されている請負金額はすべて消費税込みで考えます。よって、軽微な工事基準とされている1500万円や500万円という金額はすべて消費税込みの金額で判断する必要があります。

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建設業許可が欲しい理由

建設業許可を取得すれば受注できる工事の請負金額の上限が緩和されますので、事業拡大においては、建設業許可が欲しい大きな動機となります。

逆に言えば、軽微な工事のみを受注する建設業者であれば、建設業許可は不要です。
一般的に建築工事の施工体制はピラミッド構造をしています。工事を受注した元請業者から下請業者へ専門工事を発注し、さらに下請業者は二次下請業者へ発注します。二次以降の下請業者ともなると1件の請負工事が500万円に満たない場合がほとんどです。

しかし、二次以降の下請業者でも、建設業許可を取得します。

理由は、元請業者が強く要望するからです。
下請け業者が建設業法違反をした場合、これを発注した元請業者も罰せられます。無許可の建設業者に対しては、当然に軽微な工事の範囲内で工事を発注します。
しかし、この軽微な工事の基準がとても難しいのです。建設業法では、軽微な工事の判断において、資材の支給等があった場合には、その市場価格も請負金額に加えて判断すべしとの規定があります。元請業者は知らぬ間に、建設業法違反な発注をしてしまうことが考えられます。
これが、元請業者が下請け業者に対して建設業許可の取得を要請する理由の一つと言えます。

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元請業者はあえてリスクを冒してまで無許可業者に工事を発注しません。元請業者は、建設業許可業者へ発注するか、現在使用している下請業者へ建設業許可の取得を促します。下請け業者としては、是が非でも建設業許可を取得しておきたいのです。

建設業法について

建設業法体系

建設業許可については、建設業法に定めらた制度です。しかし、建設業法を一読すればすべてが理解できるわけではありません。法律を運用するためには、いくつかの政令・施行規則、通達、ガイドラインなどが定められます。これらを総合的に理解することで、建設業許可制度の全体像が確認できます。

建設業法においては、基本となる制度が定められます。詳細な項目は建設業法施行令で定められます。さらに具体的な基準値は建設業法施行規則にて定められます。その他数多の告示通達があり、これに基づき、建設業許可事務ガイドライン、建設業法遵守ガイドライン、社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン、監理技術者制度運用マニュアル等が存在します。これらが基本となり、建設業許可制度は運用されます。

POINT

建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則・その他告示通達の関係性を理解しよう。

建設業許可に関する条文の紹介

ここでは、建設業法において、知っておきたい建設業許可に関する条文の概要を紹介します。なお、概要については、建設業法から建設業法施行令及び施行規則等を考慮しながら記載しています。

第3条第1項
:軽微な工事だけを施工する業者以外の建設業者は、「国土交通大臣」又は「都道府県知事」から「一般」又は「特定」の建設業許可を受けなければならない。

第3条第2項
:建設業許可は29業種に分けて与える。

第3条第3項
:建設業許可は有効期限5年で更新しないと失効する。

第3条第4項
:許可更新中で許可の有効期限が満了した場合は、既存の許可が引き続き有効とする。

第7条
:一般建設業許可の基準(経営業務の管理体制・専任技術者・不正不誠実の恐れがないこと・財産的基礎)に適合した業者でなければ一般建設業許可は与えてはいけない。

第8条
:許可申請者が欠格要件に該当していた場合。虚偽申請や重要な事実が申告されていない申請だった場合。建設業許可を与えてはいけない。

第15条
:特定建設業許可の基準(経営業務の管理体制・専任技術者・不正不誠実の恐れがないこと・財産的基礎)に適合した業者でなければ特定建設業許可は与えてはいけない。特に指定建設業7業種の専任技術者については、資格者と大臣認定された者しか認めない。

 

建設工事に関する条文の紹介

ここでは、建設工事を契約・施工するうえで、知っておきたい建設工事に関する条文の概要を紹介します。なお、概要については、建設業法から建設業法施行令及び施行規則等を考慮しながら記載しています。

第4条
:工事において建設業許可を受けた業種が主たる工事ならば、附帯工事に他業種が含まれていても当該工事は受注OK。

第19条
:建設工事の請負契約は書面で必要事項(16項目)を記載して締結すること。変更契約も書面で。ただし、条件を満たせば電子データのやりとりもOK。

第19条の2
:現場代理人や監督員を置く場合は、これらに対する意見の申し入れ方法も含めて事前に相手に書面で通知しなさい。ただし、条件を満たせば電子データのやりとりでもOK。

第19条の3
:注文者は立場を利用して原価未満の金額で請負契約を結んではダメ。

第19条の4
:注文者は立場を利用して無理に資材や機械器具を買わせてはダメ。

第19条の5
:注文者は通常の工期から考えて極端に短い工期の請負契約を結んではダメ。

建設業許可のメリット・デメリット

メリット

建設業許可取得のメリットについて考えます。

メリットとして「500万円以上の工事が受注できる。」「融資額の上限があげられる。」「公共工事の入札に参加できる。」「外国人技能実習生の受け入れができる。」「施主・元請業者への強力なアピール」の5つを記載しました。それぞれについて、解説していきます。

500万円以上の工事が受注できる

建設業許可の最大のメリットといえます。建設業許可を取得していない業者が受注できるのは軽微な工事(500万円未満・建築一式工事については1500万円未満又は木造住宅で床面積150㎡未満)のみです。大きな工事について受注の機会を逃してしまうかもしれません。建設業許可を取得すれば、この上限が撤廃されます。

融資額の上限があげられる

建設業にとって資金繰りは非常に重要な問題です。できるだけ多くの資金を調達することで、安定して工事の施工を行うことができます。融資する金融機関にとって、建設業許可とは重要な意味をもちます。許可を取得することで、技術力・経営力の裏付けを得ることができます。加えて、融資に必須な事業計画においては、より大きな売り上げを見込むことができるため、その融資額も上昇する傾向にあります。

公共工事の入札に参加できる

建設業者の営業ツールの一つに公共工事への入札があります。公共工事の入札は、原則として建設業許可を取得している業者でなければなりません。(小規模な工事に限って建設業許可の無い業者でも入札参加できる制度を設けている自治体もあります。)実際に入札参加するまでには、経営状況分析・経営規模等評価申請(いわゆる経審)入札参加資格申請等のお手続きを経る必要がありますが、その前提として建設業許可が必要となります。

公共工事については、一般競争入札、指名競争入札、随意契約等その受注方法にいくつか種類があります。特に指名競争入札、随意契約においては、非常に利益率の高い仕事も含まれるそうです。
公共工事の話をしましたが、国や自治体の公共機関の他に、UR都市機構水資源機構nexco東日本高速道路などが発注する工事への入札参加資格申請にも建設業許可は必須です。

外国人技能実習生の受け入れができる

外国人技能実習制度とは、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律に基づき運用される制度で、外国人実習生の方に本国では習得が困難な技能を日本において実習を通じて習得していただき、本国に持ち帰って頂いた技能で経済発展に貢献していこうとする制度です。
これは、あくまで外国人技能実習生の技能習得を目的とする国際貢献的な制度です。ただし、実習を行っていただくうえで、これを受け入れる側(実習実施企業)にとっては、多少の労働力が確保できるというメリットが発生します(けっして外国人労働者の雇い入れができる制度と勘違いしないこと。)。
あくまで労働者として受け入れる場合には入管法の「特定技能」制度の利用があります。

制度利用にあたっては、条件がありますが、その基本となるべき要件が以下の3つです。

外国人技能実習制度利用の基本要件
・ 建設業許可を取得していること
・ 建設キャリアアップシステムに事業者登録していること
・ 建設キャリアアップシステムに実習生を登録させること

外国人技能実習制度を利用するには、上記の通り建設業許可が条件の一つとなっています。

施主・元請業者への強力なアピール

建設業許可を取得することで、工事を発注する者(施主・元請け工事業者)に対してのアピールになります。建設業法では、建設業許可を必要とする工事を無許可業者に発注した場合、発注した業者も罰せられます。よって、発注する側にとって実績や技術力で発注先を選定するのはもちろんですが、自身の発注自体が適法であるということも重要となります。無許可業者に発注する場合には、軽微な工事の範囲であるかの見極めが必要となりますので、発注先が建設業許可業者であれば、軽微な工事の見極めが不用となります。これは、施主・元請業者にとってもメリットであるわけです。

デメリット

建設業許可のデメリットについて考えます。

デメリットとして「許可後の手続き」「丸投げ禁止」「配置技術者制度」「営業所の契約制限」「財務状況の開示」をあげることができます。

許可後の手続き

建設業許可は、許可を取得すればお手続きが完了というわけではありません。建設業許可の有効期限は5年と定められ、継続するには更新手続きが必要です。これに加えて、毎年の決算日から4ヶ月以内に提出する決算変更届(事業年度終了届)や、該当する事項に変更があった場合の各種変更届があります。これらを失念して許可を失効させてしまったという案件も頻繁にあります。

丸投げ禁止

建設業法は、建設業許可業者の工事の丸投げを原則禁止しています。許可が無い業者については、元請責任はあるものの、工事を一括して下請け業者へ発注することも許されています(もちろん軽微な工事の範疇です。)。許可業者はこのような工事の施工は行うことができません。(ただし、事前に施主からの書面による承諾がある場合を除く。)丸投げ行為は、発注者の信頼を裏切る行為として、国土交通省においても厳正な処分を想定しています。

配置技術者制度

建設業許可業者の施工するすべての工事について、配置技術者(主任技術者又は監理技術者)を配置しなければなりません。これを配置技術者制度といいます。この配置技術者は許可要件の一つである「専任技術者」と同様な資格や実務経験などが必要とされており、原則として専任技術者は配置することができません。つまり、建設業許可を取得した業者については、資格者は実務経験者を備える者が複数名いなければ、この配置技術者制度を適正に運用することができないのです。人員の少ない企業にとって非常に難しい課題です。

営業所の契約制限

建設業許可を申請する際、営業所の届出も行います。建設業許可上における営業所には令三条の使用人と専任技術者を常駐させなくてはなりません。

よって、専任技術者を常駐させることができない場合、建設業許可上の営業所として届け出ることができません。

営業所とすることができなかった拠点では、取得した建設業許可業種の契約・見積等を行うことができません。無許可業者であれば、軽微な工事であればどこの拠点においても契約可能でした。許可を取得することで、登録された営業所のみでの扱いとなります。

財務状況の開示

建設業許可の制度には、申請や届出書類の一部を誰でも閲覧できる制度が設けられています。この制度において閲覧できる書類の中に毎年度決算日から4ヶ月以内に提出を求められる決算変更届(事業年度終了届)が含められています。この決算変更届には、前期分の財務諸表が添付されていますので、言わば誰でも財務諸表を見ることができる状態であると言えます。

建設業許可の種類

ここでは、建設業許可の種類について説明します。建設業許可といっても、「知事許可」又は「大臣許可」か。「一般」又は「特定」か。「29業種」のうちのどの許可なのかによって、許可される内容が異なります。建設業許可を理解するうえで、その許可の種類について知っていただく必要があります。

それぞれの区分について説明していきます。

知事許可と大臣許可

建設業許可の区分に「知事許可」と「大臣許可」があります。これは、いずれの管轄において許可されているかを示しています。都道府県知事許可においては、各都道府県知事が許可を管轄し、大臣許可においては、国土交通大臣が許可を管轄します。では、この管轄はどのようにして決められているのでしょうか。

管轄が知事許可となるか大臣許可となるかは、建設業許可業者(申請者)の営業所が所在する場所に関係します。建設業許可業者の営業所が同一都道府県内に所在する場合は、当該営業所の所在する都道府県知事が許可の管轄となります。一方、建設業許可業者の営業所が2都道府県以上にまたがって所在する場合には、国土交通大臣が許可の管轄となります。

建設業許可の事務については、知事許可においては、当該都道府県庁が窓口となり、大臣許可においては、営業所のうち主たる事務所の所在地を管轄する地方整備局(国土交通省の出先機関)が窓口になります。

上記の通り、営業所の所在地により知事許可か大臣許可であるか決定します。が、そもそも「営業所」とはいったいどのように定義されるのでしょうか。
建設業許可においての「営業所」とは、建設業の主たる営業所又は当該営業所において契約や見積もりの権限がある営業所長(令三条の使用人)が常駐しており建設業許可の要件の一つである「専任技術者」が常勤していることが条件とされています。よって、単なる資材置き場や作業員の詰所については建設業法上の営業所に該当しません。

知事許可の大臣許可の区分の違いにおいては、営業所の所在地の違いであり、受注できる工事案件の規模等には違いはありません。大臣許可だから上位の許可だろうというような考えは誤りであるといえます。

POINT

知事許可と大臣許可の違いは営業所の所在地の違い。許可の優劣では無い。

知事許可と大臣許可の違いは営業所の違いと覚えましょう。

一般と特定

「特定」が「一般」の上位に位置する区分といえます。これは、「特定」建設業許可を取得していなければ受注できない工事があるからです。「一般」建設業許可では、軽微な工事(請負金額500万円未満。建築一式工事については、1500万円未満、又は木造住宅で延べ床面積150㎡未満)を超える工事が受注可能となります。ただし、これには制限があります。この制限される工事が「特定」建設業許可であれば受注可能となります。では、具体的に「特定」建設業許可でなければ受注できない工事について説明しましょう。

特定建設業許可が必要な工事とは、施主からの発注を受ける元請建設業者の場合で、かつ下請け業者へ総額4500万円以上(建築一式工事については7000万円以上)【令和5年1月改正】の下請工事を外注する工事を受注する場合に必要となります。ここで、注意したい点は、「元請建設業者の場合で」という点です。一次下請業者や二次下請業者である場合、どんなに大きな金額で下請け業者へ外注しても、「一般」建設業許可があれば問題はないのです。

特定建設業許可が必要な工事以外の工事のみ受注する建設業者については、一般建設業許可で問題ありません。このように、特定建設業許可は、請負う工事に制限が無くなりますが、特定建設業許可を取得する際の要件は一般建設業許可よりも厳しい基準が設けられているのです。

29業種

建設業許可については、2種類の一式工事と27種類の専門工事の合計29業種に分かれています。それぞれの業種を取得することで、各業種の受注制限が解放されることになります。

建設業許可29業種
土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事

ちなみに、「一式工事」とは、原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に建設する工事をいいます。これに該当しない工事は、「専門工事」のいずれかとされます。

それぞれの業種について建設業許可の取得要件が設定されています。例えば、該当する資格者がいれば、ひとつの業者に複数業種の許可を受けることも可能です。
建設業許可の業種で一番大切なことは、自身が施工する工事が取得した許可業種に該当するかという点です。業種との齟齬がある場合、建設業許可は意味を持ちません。工事の業種判定については、一般的な理解と建設業法上の解釈では異なる場合があります。建設業許可事務ガイドラインなどを参考に、十分な検討が必要です。

POINT

許可において、工事業種の判定は非常に重要。取得する業種を間違えないこと。

工事業種を判断する際に重要な考え方が、「主たる工事」と「附帯工事」という考え方です。建設業法では、「主たる工事」に「付帯工事」が含まれていても、一体として「主たる工事」の業種として受注が可能と定められています。工事を受注するにあたっては、「主たる工事」が何の業種であるか見極める必要があります。

建設業許可番号

許可番号の見方

上記が建設業許可番号といわれるものです。許可番号から知事許可又は大臣許可であるか、一般許可であるか特定許可であるか。許可を取得した年度を確認することができます。許可の更新などがあった場合には、年度は更新した年度の数字が記載されることになります。
ちなみに宅地建物取引業免許の免許番号は、許可の更新をするたびに数字が増えるので、何年間免許を所持しているかということが免許番号からわかるのですが、建設業許可は継続年数はわかりません。

建設業許可番号だけでは、取得した業種を知ることができません。よって、建設業許可業者が何の業種を取得しているかを確認する方法として、国土交通省のウェブサイトより建設業許可業者を検索することで許可の業種を調べることができます。

 

許可通知書の取り扱い

建設業許可通知は、建設業許可を取得した際、業種追加をした際、更新をした際に発行されます。
例えば、許可を取得した後、業種追加を行った場合には、異なる許可年月日の許可通知書が2枚手に入ることになります。当該許可通知書にはそれぞれに許可期限がありますので、それぞれ更新することも可能です。ただ、これでは更新手続きを2回行うことになり許可期限の管理も煩雑です。そこで制度として許可の一本化という手続きがあります。許可更新を行う際に、他の許可年月日の業種があれば同時に更新し、許可年月日を一本化することができます。これにより、許可期限の管理が容易になります。

許可申請書の費用

申請料

建設業許可の申請費用についてご説明します。

申請区分 手数料
(知事許可)新規、許可換え新規、般特新規 金9万円
(知事許可)更新、業種追加 金5万円
(大臣許可)新規、許可換え新規、般特新規 金15万円
(大臣許可)更新、業種追加 金5万円

上記の金額は、一般と特定許可でそれぞれ必要となります。つまり、知事許可において一般と特定許可の両方を更新しようとした場合には5万円と5万円で10万円の申請料が必要となります。

申請には、その他に添付すべき資料(住民票や身分証明書、登記されていないことの証明書、納税証明書)等が必要ですので、これの実費が追加で必要となります。

行政書士の報酬

建設業許可の申請は行政書士に依頼することができます。行政書士に依頼する場合には、申請料に加えて行政書士の報酬を支払います。建設業許可においては、要件により準備する書類が異なるため、その作業量に応じて報酬が変わります。一律〇万円という広告をだされている行政書士もおりますが、これは料金をわかりやすくするために平均化しているか、もしくは依頼内容によって追加報酬が発生するものと考えたほうがよろしいでしょう。

概ね、建設業許可の新規申請については、行政書士報酬を10万円~20万円の間で設定されている事務所が多いです。当事務所での最頻値としては12万円~16万円です。

行政書士によって、その業務の進め方は様々で、ご自身の利害と合致する行政書士を見つけることが大切です。

建設業許可の要件

要件の概要

建設業許可は許可制度ですので要件が設定されています。

建設業許可の要件を「常勤役員等」「専任技術者」「財産的基礎」「誠実性」「欠格要件」「社会保険」「営業所」にわけて理解します。これらをすべて満たせれば、建設業許可を取得することができます。逆に許可業者でも1つでも欠くことになれば建設業許可は失効してしまいます。

常勤役員等

建設業許可の要件の一つ「常勤役員等」について説明します。建設業許可において、経営力の基準として設定されているのが「常勤役員等」の要件です。当該要件については、役員のうち1名で満たす方法と、役員も含めた経営体制によって満たす方法があります。

常勤役員1名で満たす方法では、当該役員が5年以上建設業者で役員(取締役、執行役員、令三条使用人等)として、建設業の経営業務について総合的に管理していた経験(経営業務の管理責任者としての経験といいいます。)があることで満たすことができます。また、その他にも、5年以上の準ずる地位での経験(経営業務を執行する権限が委譲され者に限る)または、6年以上の補助経験によっても満たすことができます。

また、常勤役員等の要件は、経営体制で満たすことも認められています。役員等について、「建設業について2年以上」「その他の業種について3年以上」合計にすると5年以上の経営経験がある者が必要とされます。かつ、この役員を補佐する組織上直下にあたる部下で当該会社(個人事業)において財務管理(5年以上)・労務管理(5年以上)・業務運営(5年以上)を経験した者(1名で複数経験兼ねることも可。よって人員は1名~3名)を補佐として備えることで要件が満たされます。
補佐する者のポイントとしては、他社での財務管理・労務管理・業務運営の経験が認められていないことと、財務管理・労務管理・業務運営の経験については、職制によっては同時期の経験とすることができるがあげられます。

専任技術者

専任技術者要件についてご説明します。

専任技術者要件とは、建設業許可における技術的な水準を担保する要件です。専任技術者は一定の基準を満たす技術者が営業所に常勤することで満たすことができます。許可において複数の営業所を登録する場合には、各営業所に専任技術者が常勤していることが必要となります。

専任技術者要件は、まず大きなカテゴリとして「一般建設業許可」「特定建設業許可」において異なります。加えて、建設業許可29業種それぞれにおいても要件が異なります

「一般建設業許可」については、許可業種について10年以上の実務経験(電気工事・消防設備工事については、原則無資格者の実務経験は認められない。)、または指定学科卒業後3年又は5年の実務経験があること、または資格があること、大臣認定を受けていることなどが該当要件となります。

「特定建設業許可」については、原則として資格(一級等)を有しているか、大臣認定を受けている場合になります。ただし、「一般建設業許可」の専任技術者要件を満たす者に2年以上の指導監督的実務経験があれば「特定建設業許可」の専任技術者要件を満たすことができます。ただし、指定建設業6業種(土木一式、建築一式、電気工事、管工事、舗装工事、造園工事)については、指導監督的実務経験での許可は認められていません。

財産的基礎

財産的基礎について説明します。

建設業許可においては、その財務状況についても要件とされます。これを財産的基礎要件といいます。これは「一般建設業許可」と「特定建設業許可」で要件が異なります。

一般建設業許可では、3つのうちいずれか1つを満たすことが要件となります。「自己資本が500万円以上」であることについては、直近の決算日の貸借対照表で判断されます。「500万円以上の資金調達能力」については、原則として1カ月以内の証明基準日における預金残高証明書(金融機関窓口発行)か、または金融機関が発行した500万円以上の融資証明書にて確認されます。最後の一つとして「直前5年間許可をもって継続して営業した実績」についてですが、これは、主に更新の際に適用される要件で、前2つで要件を満たせない場合でも5年間許可をもって営業していたという実績をもって財産的基礎要件を満たせることになっています。

特定建設業許可では、直前決算日において4つの要件を満たすことが必要となります。「欠損の額が資本金の20%を超えていないこと」「流動比率が75%以上であること」「資本金が2000万円以上であること」「自己資本が4000万円以上であること」が要件です。特定建設業許可では、この財産的基礎は更新の際にも審査の対象となるため、更新の直前決算日の財務内容についても注意しておく必要があります。

欠格要件

建設業許可においては、個人事業主または法人においては役員、令三条の使用人が欠格要件に該当している場合は許可を取得することができません。

建設業許可の主な欠格要件
● 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
● 精神の機能の障害により建設業を適正に営むにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
● 不正の手段で許可または認可をうけたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者
● 禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
● 建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に書せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者  等

社会保険

令和2年10月1日の建設業法改正により、適正に社会保険(健康保険・厚生年金)及び雇用保険に加入していない業者については、建設業許可を受けることができなくなりました。
法人については、給与又は報酬を受けている者が1名でもいる場合には社会保険の強制適用事業所に該当します。また、雇用保険については役員とその親族以外の正社員がいる場合には該当します。

誠実性

建設業許可においては、役員等が請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれのある者がいる場合には許可を受けることができません。
具体的には、建築士法、宅建業法等の規定により不正又は不誠実な行為によって登録や免許を取り消された日から5年を経過しない者が役員等にいる場合がこれに該当します。

営業所

建設業許可においては、営業所も重要な要件の一つとなります。営業所として独立性が保たれていない場合や電話の固定回線をひいておらず営業所内で事務が執り行われるか不明瞭な場合、そもそも営業所として使用が認められない物件である場合などは許可が認められません。
また、常態として専任技術者や経営業務の管理責任者等の常勤役員、令三条の使用人等が常勤する必要があるため物理的に通勤が不可能な営業所は認められません。

建設業許可の専門家
リンクス行政書士事務所

牧野高志

牧野高志

建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においては、何よりお客様の話を聞くことを重視し、最善の対応を常に心がけている。二児の父

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牧野高志

牧野高志

建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においてはヒアリングを重視する。二児の父

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