解体工事業者登録と建設業許可の関係。受注できる工事の範囲は?

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質問:
現在、解体工事業者登録を受けています。今後、建設業許可を取得したいと思っていますが、建設業許可を取得すると「みなし登録業者」となるらしいのですが、ここらへんがいまいちわかりません。

解体工事を営む方にとっては、解体工事業者の登録から建設業許可の取得は、登竜門と言えるステップアップです。具体的な要件も気になるところですが、この解体工事業者登録と建設業許可の関係がどのようになっているかを理解しておくべき点といえます。

「解体工事業者の登録」は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称 建設リサイクル法)」(環境省)に基づく制度です。

これに対して「建設業許可」は「建設業法」(国土交通省)に基づく制度です。

この2つは、双方ともに「解体工事業を営む者」についての制度ですが、主旨が異なります。しかし、2重規制とならぬように2つの制度が設計されているため、多少わかりづらくなっています。

目次

解体工事業者の登録

「解体工事業者の登録」は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称 建設リサイクル法)」において、以下のように定められています。

解体工事業を営もうとする者(建設業法別表第一の下欄に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る同法第三条第一項の許可を受けた者を除く。)は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第20条第1項

解体工事業を営もうとする業者は事前に解体現場の管轄の都道府県知事に業者として登録を受けておかなければならないとされています。これが「解体工事業者の登録」ということです。この「登録」をうけた解体工事業者を「登録業者」といいます。

さらに、法律には記載があります。

建設業法における建設業許可業種「土木工事業」「建築工事業」「解体工事業」を受けている業者は、解体工事業者登録は不要とされています。これは、俗に解体工事業者の「みなし登録業者」といわれます。

建設業許可との関係

こちらを、解体工事業者登録と建設業法との関係から説明します。

軽微な工事

建設業法においては、軽微な工事を超える工事を受注するためには建設業許可(29業種)が必要とされています。

当然、解体工事も建設業ですので、この軽微な工事以上の解体工事を受注する場合には建設業許可を取得する必要があるということを前提に理解しておきます。

建設業法において、軽微な解体工事は500万円未満の工事と定められていますので、解体工事業者登録をうけていても、500万以上の解体工事を受注することができません。

みなし登録業者

建設リサイクル法においては、登録において建設業許可の「土木工事(土木一式工事)」「建築工事(建築一式工事)」「解体工事」を取得していれば登録は不要(みなし登録業者)であると規定されております。

「みなし登録業者」について、建設リサイクル法においては「解体工事業の登録業者」と同じ扱いをしますが、逆に建設業法においては、「解体工事業の登録業者」を建設業許可業者のようには扱いません。

これにより、同じ登録業者として扱われる「解体工事業の登録業者」「みなし登録業者」で受注できる解体工事に差異があります。

取り扱い可能な工事の範囲

以下、「解体工事業の登録業者」と「みなし登録業者」の受注できる解体工事に差異について個別に解説します。

登録業者

建設リサイクル法において、解体工事業者の登録を受けている業者です。

請負金額500万円未満(軽微な工事)の解体工事を受注することが可能です。ただし、請負金額500万円(軽微な工事)を超える解体工事については、「建設業許可の業種:解体工事」を取得する必要があります。

みなし登録業者(建築一式工事)

建設業許可の業種「建築一式工事」を取得している業者です。

請負金額500万円未満(軽微な工事)の解体工事を受注することが可能です。建設リサイクル法においても解体工事業の登録業者としてみなされます。

ただし、請負金額500万円(軽微な工事)を超える解体工事については、「建設業許可の業種:解体工事」を取得する必要があります。

なお、解体工事でも、総合的な企画、指導、調整の必要な大規模な解体工事で「建築一式工事」に該当する場合には、請負金額500万円を超える工事も受注することができます。

みなし登録業者(土木一式工事)

建設業許可の業種「土木一式工事」を取得している業者です。

請負金額500万円未満(軽微な工事)の解体工事を受注することが可能です。建設リサイクル法においても「解体工事業の登録業者」としてみなされます。

ただし、請負金額500万円(軽微な工事)を超える解体工事については、「建設業許可の業種:解体工事」を取得する必要があります。

なお、解体工事でも、総合的な企画、指導、調整の必要な大規模な解体工事で「土木一式工事」に該当する場合には、請負金額500万円を超える工事も受注することができます。

みなし登録業者(解体工事)

建設業許可の業種「解体工事」を取得している業者です。

請負金額500万円(軽微な工事)を超える解体工事を受注することも可能です。建設リサイクル法においても「解体工事業の登録業者」としてみなされます。

ただし、解体工事でも、総合的な企画、指導、調整の必要な大規模な解体工事で「建築一式工事」又は「土木一式工事」に該当する場合には、請負金額500万円を超える工事を受注することができません。

効力発生する地域の違い

解体工事業者登録については、工事現場の所在する都道府県ごとに登録が必要となります。

例えば東京都に本店・営業所のある会社だった場合、千葉県、埼玉県、神奈川県において解体工事を施工使用とする場合には、それぞれ千葉県、埼玉県、神奈川県の登録を受けておかねばなりません。

また、解体工事業者登録は5年間で期間が満了しますので、その都度更新が必要です。登録を受けている都道府県が多ければ、一層事務が煩雑化します。

これに対して建設業許可は、1つの許可が日本全国に効力を有するため、施工する工事現場が日本全国に点在してもお手続きは、主たる営業所を管轄する機関でおこなうことになります。

 

まとめ

「登録」と「みなし登録」

解体工事業者登録と建設業許可の関係は、「登録業者」と「みなし登録業者」の受注可能な工事の範囲が異なることを理解することで確認できます。

また、みなし登録業者においては、取得している建設業許可「土木一式」「建築一式」「解体工事」のいずれかによって受注できる解体工事の規模が異なります。

2つの法律が関係する許認可・登録は他にもあります。

十分にご注意下さい。

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建設業許可の専門家
リンクス行政書士事務所

牧野高志

牧野高志

建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においては、何よりお客様の話を聞くことを重視し、最善の対応を常に心がけている。二児の父

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建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においてはヒアリングを重視する。二児の父

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