附帯工事の自社施工は要注意!専門技術者の配置義務とは。

質問事例:後

弊社は、内装リフォーム業を営んでいます。建設業許可の業種は「内装仕上げ」を取得しています。工事の内訳に塗装工事も含まれるのですが、附帯工事であれば受注できると理解しています。自社で施工する場合に気をつけることはありますか。

建設業法第4条においては、受注する工事について、主たる工事業種について建設業許可をもっていれば、附帯工事も含めて受注できる旨が規定されています。

ならば、主たる工事に該当するの建設業許可を取得していれば、附帯工事はなんでもやりほうだいなのか?という疑問が沸きます。

結論としては、附帯工事についても「自社施工」する場合には、実質的な制限が設けられています。

これが、建設業法で定められている「専門技術者」の配置義務です。

「主任技術者」や「専任技術者」などと文言が似ているため、少しわかりにくい用語ですが、この「専門技術者」は附帯工事に関係する配置技術者制度と言えます。

以下、解説してきます。

目次

専門技術者の配置義務

受注に必要な建設業許可

まず、前提についていくつか理解しておく必要があります。

建設業法では、軽微な工事(500万円未満 等)を超える規模の工事を受注するには、建設業許可が必要となります。

建設業許可は全部で29業種にわかれていて、業種ごとに許可がおりるため、許可を受けていない業種については、軽微な工事を超える工事を受注することができません。

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ただし、建設業法には以下の規定があります。

建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。

建設業法第4条

上記の規定は、受注する工事の主たる工事(その工事の目的である工事)で許可を取得しているのであれば、それに附帯する工事もまとめて工事を受注することができるされています。

言い方を変えます。。

主たる工事の建設業許可業種を取得していれば、これに附帯する工事(附帯工事)が軽微な工事の範囲(500万円未満等)を超えていても、一括して受注することができるということです。

附帯工事を自社施工

主たる工事の建設業許可を取得しているとして、では附帯工事の施工には、何の規制も受けないのでしょうか。

主たる工事に関する技術は十分あるとして、許可をもっていない、まったく技術も無い附帯工事を制限なく施工できてしまうのはさすがおかしいと考えるのが当然です。

そこで、建設業法では、以下の規定がされています。

建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。

建設業法第26条の2第2項

附帯工事が軽微な工事の規模を超えている場合で、かつ、これを自社で施工する場合には、技術上の管理をつかさどる者(いわゆる「専門技術者」)を配置しなさい。でなければ、下請の許可業者に施工させなさい

ということです。

上記の条文は、専門工事に関する規定ですが、「建築一式工事」「土木一式工事」についても、同じことが言えます。

言い回しは少し違いますが、「一式」工事で受注したにも関わらず、専門工事も自社で施工する場合は「専門技術者」を配置しなければならない(軽微な工事を除く)と建設業法第26条の2第1項で定められています。

専門技術者の必要な場合

いまいちど、専門技術者の配置が必要な工事か否かを確認していきましょう。

軽微な附帯工事

附帯工事が軽微な工事の範囲内である場合、これを自社施工したとしても「専門技術者」の配置は不要です。

ただし、前提として、主たる工事に主任技術者(又は監理技術者)の配置は必要ですので、注意しましょう。

軽微な範囲を超える附帯工事(自社施工)

附帯工事が軽微な工事の範囲を超える場合で、かつ自社施工するのであれば「専門技術者」の配置が必要です。

なお、前提として、主たる工事に主任技術者(又は監理技術者)の配置は必要ですので、注意しましょう。

軽微な範囲を超える附帯工事(外注)

附帯工事が軽微な範囲を超える場合でも、その附帯工事を建設業許可業者に外注(下請負契約)する場合には、「専門技術者」の配置は不要です。

なお、前提として、主たる工事に主任技術者(又は監理技術者)の配置は必要ですので、注意しましょう。

専門技術者とは

要件

専門技術者として配置できる者は、「専任技術者」や「配置技術者」の要件と同じです。

該当する資格又は学歴、実務経験などがある者を選任する必要があります。

配置技術者と兼務できる

専門技術者は、同じ現場の配置技術者(主任技術者又は監理技術者)と兼務することができます。

非配置には罰金

設置義務のある現場に「専門技術者」を配置しなかった場合には、100万円以下の罰金が課されるされる場合があります。

まとめ

附帯工事の自社施工に注意

主たる工事の建設業許可を取得しているからといって、安心はできません。仮に500万円以上(軽微な工事を超える)の附帯工事を自社で施工する場合には、「専門技術者」を配置しなければなりません。

仮に「専門技術者」になりえる人材がいない場合には、自社施工をあきらめ、下請の建設業許可業者へ外注する必要があります。

うっかり施工してしまえば罰金をうける場合もあります。

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建設業許可の専門家
リンクス行政書士事務所

牧野高志

牧野高志

建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においては、何よりお客様の話を聞くことを重視し、最善の対応を常に心がけている。二児の父

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牧野高志

牧野高志

建設業許可を専門とする行政書士。15年以上の実務で得た建設業に関する知識、経験を武器に、難解な問題の対処にあたる。業務においてはヒアリングを重視する。二児の父

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