建設業許可には有効期限があります。引き続き許可を維持させるには、許可の更新手続きを行う必要があります。今回は、許可の更新手続き準備に際して、確認すべき事項を紹介します。これを知ることによって、更新手続きが問題なく受理されることになります。また、知らずに更新手続きをおこなってトラブルが発生することもありますので、更新といえども注意が必要です。
目次
建設業許可の更新
有効期間は5年間
建設業許可は有効期間が5年間と定められています。許可日から起算することになりますので、令和3年8月1日が許可日であれば令和8年7月31日が許可期限日となります。当該許可期限日を更新手続きしないまま過ぎてしまうと許可が失効することとなります。
許可日及び許可期限日については、建設業許可を取得した際に行政庁から発行される許可通知書に記載されています。仮に紛失してしまった場合でも国土交通省のウェブサイトから建設業許可状況を検索することができます。
建設業許可では、許可期間内に業種追加等をおこなった際には、追加された業種についても既存の許可通知書とは別に許可通知書が発行されます。これにより許可期限が2以上存在する許可業者もあります。ただし、原則として先に許可期限が到来する許可業種について更新する際に、許可期限の一本化という申請方法をとるため、これ以降は1つの許可期限に統合されます。
更新手続きの提出期限
建設業許可においては、5年間で許可期限となりますが、その1ヶ月前までに更新手続きを行うこととなります。これを許可更新の提出期限といいます。この提出期限は許可日・許可期限日とともに建設業許可通知書に記載されています。よく混同されがちなのが許可期限と更新提出期限なのですが、許可期限を過ぎた場合には完全に許可が失効するため許可の再取得(新規取得)となるのに対して、更新提出期限については、その定められた期限を過ぎてしまっても更新手続き申請を受理頂ける行政庁がほとんどです。(ただし、始末書等の提出を要請される場合があります。)
ちなみに、更新手続きの受付開始は、概ね許可期限の2ヶ月~3ヶ月前から受け付け可能となります。この受付開始日については各行政庁によって異なりますので、手引きや窓口に問い合わせる等で確認することができます。
更新手続きにかかる費用(更新手数料)
建設業許可の更新申請に際しては、更新手数料がかかります。更新申請料は許可業種の数がいくつでも一律5万円と定められています。これは知事許可、大臣許可においても差異はありません。しかし、許可区分「一般許可」「特定許可」のそれぞれに5万円が必要となるため、許可を受けている業種に「一般」と「特定」が混在している場合には5万円(一般更新手数料)+5万円(特定更新手数料)=10万円の更新手数料が必要になります。
許可期限の一本化
更新申請の際に、許可期限の違う他の許可業種を所持している場合、まとめて更新することにより許可期限をそろえることができます。これを許可の一本化といいます。一本化の手続きをすることで、許可期限がまとめられるので、許可の管理をするのにとても利便性が良いのです。建設業許可事務ガイドラインでも一本化を推奨するよう記載がされています。一本化の場合の更新手数料も5万円ですので、複数回更新するよりも費用面でも得と言えます。
更新申請前に確認すべき8つの事項
ここでは、建設業許可更新前に、確認しておきたい事項を説明します。事前に更新手続きに問題ないか確認しておくことでスムーズに事を運ぶことができます。何より現状に問題があるならば、あらかじめ対応策を検討するという点で、この確認事項は非常に重要な事項といえます。それでは、1つずつ確認しましょう。
変更事項の届出は済んでる?
建設業許可事務では、申請した事項に変更が生じた場合には、変更届出の提出が義務付けられています。更新に際して、変更があったにもかかわらず届出ていない事項があれば、まず変更届出を行った後に更新の申請を行うという順序となります。
【届出が必要な変更事項】
● 商号(個人の場合は氏名・屋号)
● 営業所の名称
● 営業所の所在地
● 資本金
● 役員・株主・政令使用人等
● 代表者
● 常勤役員等
● 専任技術者
etc
変更事項の中には許可の要件に関わる事項も含まれます。変更してしまったばかりに許可の要件を満たさなくなってしまった場合などは許可が失効してしまうこともあります。更新申請前にはこの点についてもチェックしておきましょう。
決算変更届(事業年度終了届)は済んでる?
建設業許可業者には、毎年決算日より4カ月以内に決算変更届(事業年度終了届)の提出が義務付けられています。こちらの届出は毎年行うものですので、必然的に更新申請の際には過去5年度分がすべて提出済みである必要があります。未提出の場合はこちらを提出した後に更新の申請を行う順序となります。
ちなみに決算変更届(事業年度終了届)には、納税証明書(許可の内容に応じて、法人事業税・法人税・個人事業税・所得税のいずれか)を添付することとなっていますが、種類や自治体によっては過去3年度程度しか発行を遡れないところもあります。
更新に際して過去5年度分をまとめて提出しようとする建設業許可業者もいますが、添付すべき納税証明書がすでに取得できない年度にかかってしまう場合があります。その場合には納税証明書を添付できない旨の始末書等(行政庁によっては申告書のコピーなど)の添付が必要となりますので、決算変更届は適法に毎年提出することをおすすめします。
常勤役員等の常勤性に問題はない?
更新に際して最も確認しておきたい事項の一つとしてこの常勤役員等の常勤性があります。「常勤役員等」とは建設業許可の要件の一つで、建設業の経営面の要件を担保する人材に関する要件です。この「常勤役員等」は建設業者に常勤していなければなりません。(既に退職してしまったという場合は後任を1日の切れ間なく選任して変更届を提出する必要があります。)
建設業許可の更新に際してはこの「常勤役員等」が常勤でいるのか確認資料を提出する必要があります。通常は、社会保険の健康保険証がこれにあたります。
例えば、事業が思うように展開せず他社でも働き始めてしまった(兼業状態)。持病が再発して営業所に通勤できない状態が長く続いている(勤務実態が無い)。後期高齢者に該当したため常勤性を証明できるものが無くなってしまった(証明方法の検討)。など更新に際して意図せず問題が発生している場合があります。内容によっては許可を廃業しなければならない状態かもしれません。注意が必要です。
専任技術者の常勤性に問題はない?
更新に際して最も確認しておきたい事項の一つとしてこの専任技術者の常勤性があります。「専任技術者」とは建設業居の要件の一つで、建設業の技術面の要件を担保する人材に関する要件です。この「専任技術者」は建設業者に常勤していなければなりません。(既に退職してしまったという場合は後任を1日の切れ間なく選任して変更届を提出する必要があります。)
建設業許可の更新に際してはこの「専任技術者」が常勤でいるのか確認資料を提出する必要があります。通常は、社会保険の健康保険証がこれにあたります。
「常勤役員等」と同様に意図せず常勤性に問題が発生している場合がありますので、更新の前に限らず常に建設業許可要件には気を配る必要があります。
財産的基礎要件は大丈夫?
更新に際しては、財産的基礎要件を再度審査されることとなるのですが、これは「一般許可」「特定許可」で大きく異なります。
一般許可の場合
一般建設業許可では、5年間休眠せずに事業を継続したことをもって財産的基礎要件をみたしたこととなります。よって、更新申請の際に、残高証明書や直前期の財務内容を確認させるということはありません。どんなに赤字や債務超過状態であっても更新は行うことができます。
特定許可の場合
特定建設業許可では、新規の時と同様に、財産要件の審査があります。
直前決算日において以下のすべてを満たすこと
(1)欠損比率が資本金の20%以下
(2)流動比率が75%以上
(3)資本金が2000万円以上
(4)自己資本が4000万円以上
直前決算日において上記の条件を満たせていない場合には更新することができません。ついては、更新前に対応することが必要となります。
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社会保険・労働保険は適用されてる?
建設業法施行規則第7条第2号において、建設業許可業者については、適正に社会保険(健康保険及び厚生年金)及び労働保険(雇用保険)を適用しなければならないと定められています。よって、強制適用事業所にも関わらず、これらを適用していない業者は建設業許可を更新することはできません。(令和2年10月以前は社会保険や雇用保険を適用していなくとも、建設業許可を取得することは可能でしたので、これらを適用せずに許可を取得していた業者は注意が必要です。)
ここで、建設業許可の更新に際して最も注意頂きたいのが「個人事業」の皆様です。
会社に関して言えば、給与を支払う対象が1名(例えば代表取締役1名だったとしても)でもいれば強制適用事業所となります。よって社会保険の適用が必要です。この点、個人事業では、従業員が5人未満の場合は、適用除外とされています。しかし、個人事業においても従業員が5人以上となれば社会保険の強制適用事業所となりますので、適用が義務付けられますので、従業員が増えてきた個人事業は注意が必要です。
役員任期は満了してない?
株式会社においては、会社法によって役員の任期を定めなければなりません。この役員任期が満了すれば役員は退任することになります。引き続き役員を続ける場合には法務局において「重任(じゅうにん)」というお手続きをしなければなりません。
建設業許可の更新に際して役員の任期が切れた状態であった場合には、審査官に指摘されることとなります。これは、会社の履歴全部事項証明書と定款で任期切れであるかどうかチェックできますので、更新の前には確認する必要があります。
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郵便は転送設定されてない?
更新手続き後には新たな許可通知が発行されることとなります。発行された許可通知書は営業所の所在確認も兼ねて郵送されることとなりますが、その際、郵便に転送設定をかけている場合は通知書は行政庁へ返送されてしまいます。転送設定をしている場合はあらかじめ解除しておく必要があります。
営業所の実態として、郵送物が届くということは非常に重要な意味があります。転送サービスは使用しないようお願い致します。
更新に関する疑問
更新手続きを忘れてしまった
更新手続きをしないまま許可期限を過ぎてしまった場合には、許可は失効します。残念ながら、始末書や理由書の提出でどうにかなるものではありません。
更新手続きを失念していた場合は、建設業許可を新規取得する必要があります。許可が下りるまでの無許可期間は工事の受注を抑えなければならないかもしれません。新たに発行される許可通知は許可番号が以前と変わりますので、取引先に通知しなければならないかもしれません。許可の期限についてはしっかりと管理することをお勧めします。
なお、更新の提出期限(許可期限の1カ月前)が過ぎている状態(許可期限内)であるならば、更新申請は受け付けていただける自治体がほとんどですので、許可の継続が可能です。
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許可期限までに新しい許可通知が届かない
建設業許可更新申請後、審査で問題がなければ新たな許可通知書が発行されることとなります。しかし、許可更新手続きが許可期限ギリギリになってしまったり、補正資料の指導がありこれに対応していた場合などは許可通知書の発行が遅れ、許可期限までに新たな許可通知書が届かない場合もあるかと思います。
このような場合、建設業法(第3条第4項)では、更新処理中(更新手続きが受理された状態)の場合には従前の許可が引き続き有効との取り扱いがなされます。取引先から新たな許可通知の提示を求められた場合には、既存の許可通知と更新申請書の控え(受理印を押印されたもの)を提示して対応しましょう。
財産的基礎要件が満たせない
特定建設業許可では、更新の際に新規と同様に財産的基礎要件が審査されます。具体的には、直前決算日の状態で審査されるのですが、この時点で要件が満たせない場合、以下の選択肢が考えられます。
1 そのまま建設業許可を失効させる
2 一般建設業許可に特般新規申請
3 決算日を変更したうえで増資などで対応
いずれの選択をおこなうのかについては、それぞれの事情により様々です。いずれにせよ検討する時間が必要ですので早めの更新準備は必須です。特に特定建設業許可をもっている業者は、直前決算期前には一度検討されることをお勧めします。
更新準備で必要な書類
建設業許可の更新に際しては、いくつかの必要書類があります。とりわけ取得に時間がかかるものについては、先行して準備したいものです。ここでは、先行して準備したい書類を紹介します。
身分証明書
身分証明書とは、本人の本籍地を管轄する役所で取得することができる証明書で、破産者名簿に記載されていない者・後見登録されていない者であるという証明内容が記載されます。建設業許可の更新に際しては、取締役などの役員の方・事業主及び政令使用人(令三条の使用人)について必要となります。
本籍地が遠方の方もおられますので、郵送で手配する場合もあるかと思います。日数がかかりますので、お早めにご準備ください。
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まとめ
更新も油断禁物
建設業許可の更新といっても、さまざまな注意点があります。速やかに、滞りなく更新手続きを済ませるためにも早めの準備と事前確認をおこないましょう。なお、建設業許可の更新は行政書士に依頼することができます。定期的なお手続きとなりますので、行政書士に依頼するのも一つの手段です。
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