どのくらいの期間で、どんな準備をすれば建設業許可が取れるのかをイメージしておくことは非常に重要です。
今回の記事では、資格を取らずに、早々に独立した上で、最短10年で許可を取得するモデルケースについてご説明したいと思います。
今回の条件
・ 要件は自分で身につけたい
・ 早期に独立したい
・ 資格はとらない
上記の条件で考えている方には役に立つ記事となります。
目次
10年間モデル
建設業許可の人的要件
建設業許可においては概ね7つの基準を同時に満たす必要があります。
その中でも人的要件といわれる「常勤役員等」「専任技術者」が非常に重要となります。
建設業許可において他人を宛てにしない場合、いかに早く確実に、この人的要件を自分に身につけるかを考える必要があります。
常勤役員等(じょうきんやくいんとう)
常勤の役員等の要件については、「建設業で5年間の経営経験」があることが求められます。
つまり、この要件を1人で完結させるためには、必ず5年の期間は自身が経営者になる必要があります。
具体的には「個人事業主」もしくは「会社の取締役」がわかりやすいかと思います。
専任技術者(せんにんぎじゅつしゃ)
専任技術者の要件については、許可基準の技術面を担保するための要件です。これは「資格」「実務経験(10年)」「学歴+実務経験(3~5年)」で満たすことができます。
本記事で設定した条件では、資格を取らずに許可を取得したいので、「実務経験(10年)」を選択することになります。
もちろん実務経験を積むなかで、資格を取得してしまえば、許可までの道のりはぐっと近づくと言えます。
資格無し・10年モデル
建設業許可の2つの人的要件「常勤役員等」「専任技術者」を10年で取得するモデルを考えてみました。
前半の5年間は、とにかく実務経験を積む必要があるので、条件の合う建設会社に勤めることになります。
もちろん当初から独立して建設業を営むこともできますが、技術を身につける期間と考えれば、勤めた方が効率が良く、また条件に合う建設会社であれば、建設業許可をスムーズに取得することができます。
後半の5年間は、いよいよ独立して自身で経営をおこなう期間です。
個人事業からはじめるのも良いでしょう。途中で法人(会社)化にするという選択肢もある。この期間は、実務経験と経営経験、それに財産要件のための貯金をする期間と考えます。
前半5年間は腕を磨け!
実務経験をつむ
10年間を考える上で、前半の5年間は実務経験をつむことに集中して仕事をします。
後半の5年でさらに経営をしなくてはならないので、この前半の5年間で仕事を覚えることが優先されます。
ただ、この期間、建設業許可の取得を考えるうえでは、実務経験期間としてカウントされなければ意味がありませんので、後に実務経験が証明しやすいように働くことがポイントとなります。
証明しやすいように働くとは、言い換えるならば「どのような会社に勤めるのか」が重要です。
この実務経験の証明方法を念頭に、勤める建設会社を選択すべきです。
どんな建設会社に勤めるべきか
建設業許可の取得を見据えるならば、以下の条件が整った建設業会社に就職することをオススメします。
それは、つまり自身で建設業許可申請をしようとした時に、実務経験の認定が受けやすい条件と考えて下さい。
建設業許可をもっている
後に建設業許可申請に際して実務経験を証明するにあたって、建設業許可をもっている会社に勤めていた場合、その在籍期間が証明できれば当該許可業種については業務内容の裏付け資料を省略することができる自治体がほとんどです。
つまり、建設業許可をもっている建設会社ならば、その業種は裏付け不要と言うことです。
逆に、建設業許可をもっていない建設会社に勤めてしまった場合、勤めている期間に建設業を営んでいるかの裏付け資料が必要となるわけです。
建設業許可を申請する際には、すでにその建設会社を退職しているわけですから、資料など借りてこれようもありません。実質的に証明が無理なのです。
よって、勤務すべきは建設業許可をもっている建設会社に限ります。
(社会保険)厚生年金を適用している
適法に社会保険の適用を受けている会社に就職することが大切です。
建設業許可申請においては、実務に従事していた期間(会社であれば在籍期間)を証明する必要があります。
その証明はズバリ「厚生年金記録」で一目瞭然なのです。
勤めている建設会社が建設業許可を持ち、厚生年金記録で自身の在籍が確認できれば実務経験の証明は完成です。
会社(法人)であれば、そこで働く従業員は強制的に社会保険(健康保険・厚生年金)の適用を受けねばなりません。
しかし、社会保険の適用をしないままに(または一部の従業員のみ適用させて)働かせている建設会社もあると聞きます。(これは違法です。)そんな、会社に勤めるべきではありません。
また、従業員が4名以内の個人事業主に勤める場合、法的に社会保険の加入義務はありませんので、避けたいです。
後半5年間は独立して貯金をしろ!
経営・実務・貯金
建設業許可の要件「常勤役員等」を満たすためには、5年間の建設業での経営経験が必要です。
勤めている会社で支店長等(令三条の使用人)として働いていないのであれば、いつまでたっても経営経験を積むことはできません。
ついては、自身で独立し、経営者となる必要があるわけです。
経営とはいいつつも、建設業許可の要件である10年の実務経験も満たす必要があるわけですから、継続して現場で実務経験を積む必要がありますし、その間、財産要件を満たすための貯金(目標500万円)をすることも大切です。
ちなみに、独立に際しては、個人事業でも、会社を設立して、その役員として働いても結構です。
経営経験
独立して経営経験を積んでいくとして、建設業許可申請に際しては、その経営経験がどのようなものであったかという証明が必要となります。
この証明には裏付け資料の提出が必要です。
裏付け資料は、ポイントをおさえて、継続的に収集しておく必要がありますので、以下説明します。
確定申告書に注意
独立をする際に個人事業主としてスタートされる方もいるでしょう。
個人事業として営業するのであれば必ず毎年所得税(事業所得)の確定申告が必要となります。
必ず申告するのはもちろん、その控え(税務署の収受印があるもの)を必ず保管して下さい。
また、電子申告するのであれば、電子申告した旨の「メール詳細」という画面の印刷も忘れずにおこなって下さい。
なお、東京都庁では、この個人事業の期間(事業所得)において、同時に他社からの給与収入(給与所得)があると、経営に専念していないとされ経営経験の期間から除外されてしまうので、注意が必要です。
工事実績の資料の保存
事業をおこなっていくにあたって、工事の実績資料を保管しておくことがとても重要です。
「経営経験」及び「実務経験」を証明するためには、実際に工事をおこなっていたことの裏付けとして、「契約書」「注文書」「請求書(控)+入金記録」を提示する必要があります。
これらの資料から、施工した工事の内容が読み取れる必要があるので、件名、内訳などより具体的に記載するよう心がけましょう。
また、工事代金を受け取る際には、少額でも預金通帳に形跡が残るように預金口座に振り込んでもらいます。
希に工事代金を現金受取をされている方もいますが、これが売上代金であるという証明ができません。
500万円の貯金
建設業許可を取得するにあたっては「財産的基礎」要件も見逃せません。
財産的基礎要件は「自己資本が500万円以上」もしくは「預金残高500万円以上」のいずれかで満たすことができます。
これは、資金の調達能力を証明する要件ですので、一時的な預金残高でも要件を満たすことができます。
つまりは、個人事業でやるにしろ、会社でやるにしろ、自身で500万円の預金があれば条件を満たすことができます。
よって、10年で建設業許可を取りたいのであれば500万円を貯金で準備しておきましょう。
まとめ
10年を有効に
建設業許可に重要なのは、人的要件「専任技術者」「常勤役員等」の要件です。
「専任技術者」は実務経験10年で満たすことができます。
「常勤役員等」は経営経験5年で満たすことができます。
今回の記事では10年間で満たすためのモデルケースを説明しましたが、当然状況は変わるモノです。
資格の取得や、要件を満たす仲間と組んで事業を興すなど、違った手法で建設業許可を取得することも選択肢のひとつです。
現時点で、どの選択肢がベストなのか専門家に相談するのも良いかもしれません。
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