建設業許可において、非常に重要なのが、人的な要件。つまりは「常勤役員等(」「専任技術者」が常勤していること。
突然、「専任技術者」が会社を辞めてしまった。「常勤役員等」であった会長が亡くなってしまった。などという相談は頻繁にあります。
建設業許可においては、この人的要件を欠いてしまった場合、後任を選任できなければ許可を維持することができません。
また、この後任を選任したという届出は、2週間以内に提出するとの期限が決められています。
ここで、勘違いしてしまうのが、「2週間以内に後任を用意すればOKですか。」というご質問です。
結論言えば、建設業許可を維持するためには「前任者」常勤と「後任者」常勤に1日でも空白が生じると許可を失ってしまいます。あくまで届出が交替の日から2週間以内という理解が正しいのです。
これについて、以下、解説します。
目次
人的要件を欠いてしまった
建設業許可は、人的な要件が非常に重要です。
「専任技術者」や「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」が常勤を離れてしまう(退職・パート勤務・非常勤etc)場合、後任が切れ目無く選任されている必要があります。
1日の切れ目もダメ
例えば、「専任技術者」が急に退職することになり、退職日において後任の専任技術者がいない場合には、建設業許可を返納しなければなりません。
つまり、1日でも建設業許可の人的な要件を不在にすることは許されないのです。
急に亡くなった場合であっても
人的要件が1日でも途切れた場合には許可は返納という取り扱いは、例え原因が「死亡」であったとしても、かわりません。特別な措置がとられるということはありません。
※個人事業主が死亡後30日以内に、他の要件を備えた遺族に事業が承継(相続)される場合は、許可を維持することができる場合があります。
常に後任を考えて
建設業許可の人的な要件は、常に後任を準備すべきです。
しかし、中小企業において、人材を確保するというのは非常にハードルが高い問題です。
後任の準備として、資格の取得を推奨する。取締役に就任させて経営経験を積ませる。などと、計画的に策を進めることが必要です。
「提出期限が2週間」とは
「専任技術者」や「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」の変更の届出は「2週間以内」と定められています。
許可に係る建設業者は、営業所に置く第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者として証明された者が当該営業所に置かれなくなつた場合又は同号ハに該当しなくなつた場合において、これに代わるべき者があるときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その者について、第六条第一項第五号に掲げる書面を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
建設業法 第11条第4項
この「2週間以内に」という意味を勘違いしてはいけません。
提出期限であって、選任期限ではない
ここで注意したいのは、あくまで「提出期限」が2週間以内なのであって、2週間以内に後任を用意すれば良いという意味(いわゆる選任する期限)ではないということ。
勘違いの原因
建設業許可において、後任の選任期限が2週間だと勘違いをされている方が多い理由は、「宅地建物取引業免許」にあるかと思います。
「宅地建物取引業免許(いわゆる不動産業免許)」では、その要件たる「専任の取引士」(宅地建物取引士)が不足した場合、2週間以内に補充等の措置をとればよいことになっています。(宅地建物取引業法 第31条の3第3項)
「建設業許可」と「宅地建物取引業免許」の両方の許可(免許)をもっている事業者も多いでしょうから、上記の点が混同されてしまうのでしょう。
東京都知事許可は厳格
建設業許可の要件は、1日でも途切れてしまえば許可を返上しなければなりません。
とはいえ、実際のお手続きに際しては、知らん顔して提出してしまえば、なんとかなるでしょう?と考えている人も多いのではないでしょうか?
そんなことはありません。
とくに「東京都知事許可」を取得している業者の方は、慎重になる必要があります。
「東京都知事許可」での審査は非常に厳格で、「常勤役員等(経営常務の管理責任者)」や「専任技術者」を交替する時、前任者がいつまで常勤していたのか。後任がいつから常勤なのか。という点を裏付け資料をもって審査します。(具体的には、社会保険の資格喪失日の資料など)
つまり、前任者の常勤と後任の常勤に空白期間が生じれば、許可を一旦返納するということになります。再度許可を取得するまでには、東京都知事許可では、申請してから概ね1ヶ月程度時間が必要となります。
まとめ
許可要件は1日切れてもダメ
建設業許可の要件である「常勤役員等」「専任技術者」については、1日でも不在の期間があると許可を失います。交替の変更届けは2週間以内に提出されていますが、これは2週間以内に後任を見つけなさいという意味ではありませんので注意下さい。
常に後任を考えながら、組織を運営することが重要です。
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